応用生物プロセス学講座 > 研究内容 > ハロゲン化酵素の機能とその応用 ハロゲン化酵素の機能とその応用Halogenating enzymes and their applicationTo date, various types of halogenating enzymes and their reactions have been reported. These enzymes mainly comprise heme-type haloperoxidase, vanadium-dependent haloperoxidase, non-metal haloperoxidase (perhydrolase), flavin-dependent halogenase and SAM: halide ion methyltransferase, among others. The most common reaction mechanism of these enzymes, except SAM: halide ion methyltransferase, involves oxidation of the halide ion (X-) into halonium cation (X+) using hydrogen peroxide (haloperoxidases), and flavin-dependent halogenases using oxygen as an oxidant, which is still under discussion. The halonium cation produced at the enzyme active site or released from the enzyme immediately acts as an electrophile with various organic compounds to generate halogenated compounds. Haloperoxidases do not display stereoselectivity for these reaction mechanisms, although halogenases recently identified in bacteria generally exhibit strict substrate specificity and regioselectivitv, but with low reaction rates. Therefore, the application of these enzymes to bioprocesses producing (chiral) halogenated substances is limited to special cases. 海洋生物からは、ブロモホルム(CHBr3)や臭化メチル(CH3Br)のような低沸点ハロゲン化合物、多種のブロモフェノール類、ハロゲン化テルペン類が報告されている。また土壌微生物はクロロテトラサイクリンなどの含ハロゲン抗生物質を生産している。しかし、これら化合物の生合成メカニズム、生理的意義の多くは未だに解明されていない。我々は各種ハロゲン化酵素について、これまで広範囲に研究を行ってきた。1)ここでは、各種生物由来のハロゲン化酵素にとその応用の可能性ついて報告する。 ハロゲン化酵素は、これまでのところ3種に大別されている。一つはハロペルオキシダーゼと呼ばれる酵素群であり、もう一つは、ごく最近にその研究が進んだハロゲナーゼ、もう一つはS-アデノシルメチオニン(SAM)依存性のハライドイオンメチル転移酵素である。 ハロペルオキシダーゼは下式1で示されるように、過酸化水素の働きにより、ハライドイオン(X-、X:Cl, Br, I)を対応するハロニウムカチオン(X+)に酸化活性化し、この活性種(求電子剤)が種々の有機化合物をハロゲン化する。 フラビン依存性のハロゲナーゼについては、我々は研究を行っていないが、フラビン依存性のモノオキシゲナーゼと類似の反応機構で、還元型フラビン(FADH2)を要求し、酸素から次亜塩素酸型(Cl+OH-)の中間体またはFAD-O-Cl中間体を生成する。その他の反応機構も提唱されている。微生物の二次代謝に関与するハロゲン化酵素がようやく明らかになったと言える。明瞭な基質特異性と位置特性を示すが、反応速度(kcat)はかなり低い(0.1-1.4min-1)。2) SAM:ハライドイオンメチル転移酵素はハライドイオン(X-)がSAMの活性メチル基に対して求核置換反応するものであり、ハロゲン化ペルオキシダーゼとは反応のメカニズムが異なり、生成物はモノハロメタン(CH3X)に限定されている(式2)。 生物界、特に海洋環境において多様な含ハロゲン化合物の合成に関与している酵素はハロペルオキシダーゼである。酵素化学的には、ヘム鉄を補欠分子族とするヘム型酵素、ヘム鉄とフラビンの両者を有する酵素、非ヘム型金属酵素(主にバナジウム)および非金属酵素4種に大別され、かなり多様な酵素群を形成している。1) 海洋環境には、ハロペルオキシダーゼ活性を有する海藻が数多く存在している。我々は、特にサンゴ藻(Collalinaceae科)由来のバナジウム酵素を詳細に研究し、同酵素がブロモホルム類を生成するメカニズムを明確にした。3) またブロモホルムが生理的に他の微細藻の付着防止作用を有するアレロケミカルであることを証明した。他方、海洋プランクトン由来のSAM:ハライドイオンメチル転移酵素の研究結果より、海洋プランクトンからのモノハロメタンの生成メカニズムを分子レベルで明らかにした。4) また、Pseudomonas細菌より、Co2+で活性化され有機酸要求性の非金属型のエステラーゼ-ブロモペルオキシダーゼ(ペルヒドロラーゼ活性も有する)酵素遺伝子をクローニングし、同酵素の性質を詳細に検討した。5,6) 同酵素は、一般のエステラーゼ活性以外にも酢酸と過酸化水素の存在下、過酢酸中間体を経てハライドイオン(X-、X:Br, I)を酸化する。また過酢酸中間体は、アニリンやスルホンの酸化も触媒する。現在、同酵素のバイオプロセス、特に不斉酸化反応への応用について検討している。 References
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