医薬品工学科 村上 達也 教授どんなことを研究していますか?
世界初への挑戦。眼球への『注射』を『目薬』に変え、多くの人を失明から救うナノカプセルの開発
富山県立大学の医薬品工学科は、他大学には類を見ない珍しい学科で、日本全国から「薬づくりを学びたい」という学生が集まっています。ここでは、工学部でありながら4年制薬学部と同等の高度な学習ができるのが大きな強みです。私たちの研究室は「本気で実用化を目指す研究」を行っています。
現在、私が最も力を入れているのは、主要な失明原因(日本で第4位、世界で第1位)である目の奥の病気「加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)」に対する新しい点眼剤(目薬)の開発です。現在は眼球に直接注射する治療法が中心で、患者さんに多大な身体的負担をかけています。高額医療でもあります。究極的には、これを「目薬をさすだけ」に変えたい。しかし、点眼で目の奥(網膜)まで薬を届けることは、世界中の研究者が何十年も挑みながら実現できていない超難問です。
私たちは、体の中で多面的な保護作用を示す成分を試験管の中で人工的に合成し、さらに少し手を加えて、直径わずか10ナノメートル(コロナウイルスの数分の一)という超微細な「脂質ナノ粒子」を開発しました。これ自身が薬になりますが、さらに薬として既に使われている成分をこのナノ粒子に包み、眼の奥まで届けることを目指しています。マウスを使った動物実験では、点眼治療効果の実証に成功しています。この先の実用化(臨床試験)に向けては、さらに大きな動物での実証や、企業との協業など超えるべき壁がたくさんあります。大学教員としての講義や研究室運営、海外との連携など多忙な日々ですが、「実際に患者さんへ届く薬をつくる」という想いを原動力に、世界に先駆けた成果を目指して研究を続けています。

研究室の雰囲気について教えてください
旧帝大にひけを取らない実験環境。教員1人に学生3人の『超少人数』
富山県立大学の医薬品工学科は、薬学人気の高まりもあり、富山県内だけでなく全国から学生がやってきます。他学科に比べて県外出身の学生の割合が高く、多様なバックグラウンドを持つ学生たちが集まる、非常に活気ある学科です。
何よりの自慢は、他大学を圧倒する素晴らしい研究環境です。本学に赴任した時は、最先端の実験設備や充実した学内研究費には本当に驚かされました。この恵まれた環境のおかげで、学生たちは国内外学会に参加し、自分の研究成果を発表するとともに最前線の知見に触れるチャンスに恵まれています。
もう一つの魅力は、「超少人数教育」です。教員1人に対して1学年あたりの学生はわずか3名。全員にじっくり目を配り、一人ひとりの個性ややる気に合わせた深い指導が可能です。学年ごとに独自のカラーや団結力があり、研究室の中では先輩が後輩を自然とサポートする温かい文化も根付いています。
メッセージをお願いします
まずは『化学』を強みにしよう。製薬会社が集まる恵まれた富山の地で、未来の医療を創る
薬づくりを目指す皆さんに、いま一番伝えたいのは「化学を苦手科目にしないでほしい」ということです。私自身、大学教員になる前に製薬会社に5年間勤めていましたが、医薬品はもちろん、化粧品に含まれるさまざまな分子、物質の性質を考えるベースは「化学」にあります。化学は目に見える現象を扱う、とてもとっつきやすくて面白い分野です。大学に入ってからも化学の知識をしっかり身につけておけば、就職活動の際、業種に関する視野が劇的に広がり、将来の選択肢を増やすことになると思います。
富山県立大学には、医学や薬学の最前線を走ってきた先生、そして私のように企業出身の先生など、多彩な背景を持つ教員が集まっています。「研究や論文発表をして終わり」ではなく、「世の中の役に立つ実用的な研究をする」という共通の熱意のもと、多様な考え方や価値観に触れられることも魅力です。
そして、富山県には多くの製薬会社が集まっています。国が今まさに力を入れているバイオ医薬品や、最先端の医薬品製造開発を担うCDMOもあり、薬づくりを学び、研究するうえでこれ以上ないほど恵まれた環境です。最高の設備、手厚い少人数教育、そして製薬産業が集まる地域環境。この三つの強みがそろう富山で、世の中を豊かにする「本気の薬づくり」に挑戦してみませんか?皆さんと一緒に研究できる日を楽しみにしています!
※記事内の情報は取材時点のものです