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月刊ドンマスMonthly “DON-MAS”

Monthly “DON-MAS” Vol.45
サポートする看護職から、さらにリードする看護職へ。

「看護師」として高度な能力を持つ人材の育成を目指す、大学院看護学研究科(修士課程)。
「保健師」として地域で活躍できる人材の育成を目指す、看護学専攻科(公衆衛生看護学専攻)。
「助産師」として自律して臨床判断できる人材の育成を目指す、看護学専攻科(助産学専攻)。

2023年4月に新設されるこれらの研究科、専攻科に関し、看護学部の佐伯和子教授(以下、佐伯)、越田美穂子教授(以下、越田)、松井弘美教授(以下、松井)の3名にお話をお伺いしました。

左から越田 美穂子教授、佐伯 和子教授、松井 弘美教授
専門性が高く、管理的な役割も担える人材を育てていきたい。

ー まず、大学院や専攻科の設立の経緯について教えてください。

佐伯 では、大学院設立の経緯についてお話しさせていただきます。本学の看護学部は「現場で自信を持って働ける看護師を養成する」ことを目標に、4年間かけてしっかり教育を行っています。2019年度に看護学部が設立されました。この春ついに一期生が卒業し、多くが医療の現場へと歩を進めていくことになります。 その一方で看護職に対し「より専門性の高い仕事をしていってほしい」「組織の中で、管理的な役割を担ってほしい」といったニーズが、社会的にも高まってきています。看護師本人がより自主的に判断し、行動していく力が求められているということです。本学でも「自立した人材の育成」の重要性を考え、大学院がつくられました。

松井  現在、富山県内では、保健師、助産師の養成校は1校であり、富山県医師会や富山県公的病院長協議会、富山県看護協会などの関連団体から本学に専攻科設置の要望がありました。また、富山県内の医療機関における専攻科設置のニーズが強く、学生においては看護学を4年間学ぶ中で、看護職の中でも保健師や助産師を目指したいという学生が一定数います。このような状況から本学で保健師および助産師を育成し、富山県の保険医療福祉に寄与するために専攻科を設置することとなりました。

これからの看護職に求められるのは、リーダーシップと、連携力。

ー 次に、教育方針について教えてください。

佐伯 大学院には「研究コース」 「専門看護師コース」の2つのコースを設けています。 まず研究コースですが、看護に関し日頃自分が感じている問題意識、職場などで感じている問題意識に対し、それらを解決するためには、実態やその背景を明らかにし、対策を提案することが必要です。研究はモノゴトを深く探求し分析する活動なので、研究で培った能力を課題解決に活かすことができます。実際、何かを変えようとする時「現実はどうなんですか?」と、根拠や状況分析が求められます。実践的に論拠を構築していく力を身につけていくのが、このコースです。学んだ研究手法を実践の現場で活かせる人材に育ってほしいと思っています。 次に専門看護師コースですが、本学では「認知症が増えている」という富山県内の状況を鑑み、この部分に特化した、高度実践看護者(老年看護)を養成するコースを設けています。 専門看護師ですので、その人の日常生活を施設内で支えたり、地域で支えたりといった部分において「自ら判断をして、対応できる」存在になることが重要です。医師からの指示を待っているだけでなく、自立的に行動できる、さらには若いスタッフに対し指導できるようなスキルを持った人材を育成していこうというのが、このコースです。

越田 公衆衛生看護学専攻の教育方針について、お話しします。公衆衛生看護学専攻では、一年間という短い期間の中で保健師の国家資格取得を目指していくわけですが、保健師として働くフィールドは行政や一般企業、保健医療施設、福祉施設など多岐に渡ります。そういった中で、リーダーとなっていけるような人材育成のための教育を行っていきます。地域での健康課題に対し情報収集して分析し、課題を明確にし、その解決に向け専門職や住民の皆さんとネットワークを作っていくための中心的存在になっていってほしいと思っています。

松井 助産学専攻の教育方針の最大のポイントは「臨床判断」と考えています。妊娠時、母体や胎児に対しリスクが高まる時期を周産期と言いますが、助産学専攻ではこの点を重視した教育を行っていくことになります。なぜなら、現在国内における周産期医療は危機的な状況にあると私は考えているからです。 ご存知のように出生数は激減しています。その一方で働く女性の増加もあり、出産年齢も高齢化しています。また、不妊治療も増えていますし、何らかの基礎疾患をもつ妊婦も少なくありません。周産期のリスク要因が増えているのです。そのような状況下で必要となるのは、自律した臨床判断ができる助産師の存在だと考えています。それに応えるための教育をしっかり行っていきたいと思っています。

看護の発展を目指していく上でのキーワードは「地域」。

ー 皆さんのお話を伺っていると「地域」という言葉がたくさん出てきます。

佐伯 看護職と地域のつながりは、今後ますます大切になっていくと思います。例えば先ほども申し上げましたように、認知症をはじめとした老年看護を考える場合、それは看護職だけの問題ではありませんし、家族だけの問題でもありません。地域としてどうケアしていくのか、そこに暮らす人々や多くの専門職、多機関との連携の視点が不可欠です。

越田 先ほど認知症の話もありましたが、保健師というのは地域をベースに活動する看護職なので、認知症になったとしてもずっと暮らしていけるような地域づくりをしていくことが理想だと思っています。もちろん認知症だけでなく、最近なら新型コロナウイルス感染症などの健康課題に対して専門職と連携して対応したり、災害時の被災地支援にも保健師が派遣されるなど、活躍の場は、どんどん広がっています。

松井 近年、核家族化や晩婚化などにより、出産前後の身体的・精神的に不安定な時期に家族等の支援が十分に得られず、不安や孤独感を抱きながら育児を行う母親が少なくありません。このような状況から出産後一年以内の母子を対象として「産後ケア施設」が増えてきており、多くの助産師が活躍しています。助産師の支援は医療施設だけで終わるのではなく、地域にどのようにつないでいくかが重要となります。

「看護職で社会を変えていこう」という気概のある人は、ぜひチャレンジしてほしい。

ー 最後に、これから大学院や専攻科を目指す学生さんに対し、一言お願いします。

佐伯 積極的に学んで、何かに挑戦したい、変えていきたいという気概のある方に来てほしいですね。それは自分自身の成長にも、社会を変えていくことにもつながります。その役割を、大学がサポートできればと思っています。

越田 保健師の育成コースということもあるので、地域に根ざし、地域の人たちとの関わりの中で、健康の支援を行っていきたいという動機を持っている人に来ていただければと思います。地域の健康支援のネットワークをつくり、マネジメントできる人が理想です。

松井 性と生殖に関わる全てにおいて、身体的にも精神的にも本人の意思が尊重されるという意味で「リプロダクティブヘルスライツ」という言葉があります。女性や子どもはもちろん、家族、地域の視点も考えながら、広い視野でこの分野を頑張りたいという人に来てほしいです。

ー リーダーシップを持つ看護職の必要性を、強く感じることができました。皆さん本日は、ありがとうございました。


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