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月刊ドンマスMonthly “DON-MAS”

Monthly “DON-MAS” Vol.42
時代が求めるDX人材とは。DX教育研究センターで研究する3名の先生にお話をお聞きしました。

DX教育研究センター(以下、DXセンター)は、デジタル技術を活用し、社会や人々の暮らしをより良くするDX教育と研究の取組みを行うことによって、地域社会はもとより広く人々の生活を支援するための人材教育や高度な研究を推進することを目的としています。そんなDXセンターで研究を行っている先生方の中から、今回、機械システム工学科の寺島修准教授、情報システム工学科の岩本健嗣准教授、知能ロボット工学科のミャグマルドラム・ビルグウンマ助教に「DX人材の育成」をテーマに、色々お話しをお聞きしました。(以下、 寺島准教授:寺島、岩本准教授:岩本、ミャグマルドラム・ビルグウンマ助教:ビルグウンマ)

左から寺島准教授、岩本准教授、ミャグマルドラム・ビルグウンマ助教
時代のニーズに合わせ、人材育成のあり方も変わってきています。

寺島 私の研究分野は機械工学です。機械力学や制御工学、流体工学の知識を踏まえながら機械の振動や騒音の低減に取り組んできました。これまでは、自動車や工作機械など、乗員や作業者が操作する機械の改良や改善を行ってきましたが、今、力を入れて取り組んでいるのは、自分で考えて動く機械の研究です。例えば、工作機械では、機械の調子が悪ければ、自らエラーを出し、空調機械では、部屋の中の人が暑いと感じれば、冷風が出る、寒いと感じれば、温風が出る、自動車では、乗員がうるさいと感じれば静かにする、といった研究になります。一言で言えば、「機械システムのDX」ですね。岩本先生は、どんな研究をされていますか?

岩本 私の研究室の基本的な考え方は、「何かからデータをとって、それを何かにフィードバックする」というものです。分かりやすい例を二つ挙げると、一つは富山県の基幹産業である製造業のデジタル化です。今、製造業には生産性の向上や省人化などが求められていますが、古い機械をそのまま使っている企業が非常に多いため、IoTでセンサからデータを取ることで情報を可視化し、経営者の判断材料に役立てています。もう一つは、観光客向けのアプリからデータを取って、そのデータを観光政策に生かすための研究です。富山県に滞在する観光客の方々に、富山の魅力を知っていただきながら、経済効果にも寄与できたらと考え、アプリを通して観光客の情報を取得し、行動変容をもたらすような心理的な効果を入れ、価値ある観光を作り出すための研究をしています。ビル先生は、どんな研究をされていますか。

ビルグウンマ 私は、ドローンの自動運転を研究しています。例えば、高い木やビルがあったら、ドローンが自分で計算して迂回する方法を選ぶようになるというものです。そのためには、自動運転の安全性を確保することが必要です。以前は、電波が周囲の障害物などでどのように減衰するかを予測するために、高速解析に対応した独自モデルによるAI解析を行っていました。今は、その段階からステップアップした形になります。

岩本 寺島先生は、人材育成についてどのように考えられていますか?

寺島 機械のDXという研究は、機械科で習う知識だけではできないんです。これまでは機械科で学ぶ知識だけでも十分社会で通用しましたが、今はもう、一つの分野で得た知識だけでは時代のニーズにこたえる機械を作り出すことが難しい時代になりました。価値のある機械を実現するには、価値のある知識が必要で、そのためには情報システム工学科や機械システム工学科、知能ロボット工学科の先生方や学生とコラボすることが大切です。それが人材育成の鍵の一つと考えながら取り組んでいますね。いろいろな分野の知識を取り入れながら機械の価値を深めていける人を育てなければいけないと思っています。

岩本 かつては一つの分野に特化して狭く深く習得すれば、何か問題が起きた時にそれを解くことができましたが、昨今は変化が早く、激しい時代で問題も複雑になっています。ですから、ある分野だけ詳しくても問題が解けなくなってきているんですよね。その点、DXセンターには複数の学科が集まっているので、学問領域を超えた学際的な研究ができるのではないかと思っています。

寺島 そういうふうに研究を重ねていけば、就活する時も通常の機械科の学生とは違ってくると思いますね。

岩本 私の研究室では、最初にきちんと社会の問題を理解して、そこにコミットできるような研究テーマを学生自身に考えさせるようにしています。「それをやったら誰がどう嬉しいのか」というマインドを大切にしているところが、その他の研究室とは異なる点といえるでしょう。なぜそうしているのかというと、寺島先生がおっしゃったように、テーマを立てるには情報以外の分野の知識を取り入れなければ、その研究にどれくらいの価値があるのか見えないからです。例えば、「インターネットの動きを0.1%早くしたい」と思ったとしましょう。研究としてはとても意味のあることですし、早くなることは素晴らしいことですが、果たしてそれを欲している人がどの位いるのかということまで考えてほしいですね。そういうことを考えられるのが、DX人材ではないかと。学生には、自分の技術が高齢者の生活支援や地域の活性化など社会課題の解決につながるのか否かを常に考えてもらう必要があります。

ビルグウンマ 私の研究室では、一般の人だけでなく、目の見えない方たちを助けるために、DXやシステムで何ができるのかを学生に考えさせています。目の見えない方たちは、駅構内のどの場所にどれくらいの人がいるのかを把握することができません。彼らの「人が少ないところに並びたい」という依頼に応えられるよう、レーザー光を利用して人体との距離を測り音声で伝えることで、人が少ないところを見つけて行けるようなシステムを学生と一緒に作っています。学生には、「一般の人だけでなく、目の見えない人が困っていることを助けよう」という考え方を教えていますね。

社会とつながり、視野を広げる経験が、学生のチカラに

岩本 DXセンターには、「POLYGON(ポリゴン)」という学生団体があります。サークルではなく、大学が公式に設置している団体のことで、情報システム工学科、生物工学科、機能システム工学科、知能ロボット工学科の学部1年生から修士2年生までの学生がDXに関わるプロジェクトや自主的な活動をしています。その活動の一つとして行っているのが、富山県庁のデジタル化のお手伝いをするプロジェクトです。学生を会計年度任用職員というアルバイトの公務員にしてもらい、リアルな現場のデジタル化を県庁の方々と一緒に取り組ませてもらっています。

ビルグウンマ DX教育研究センターのコワーキングスペースでは、「ケンダイラボ」も行われていますね。

岩本 そうです。DXセンターには会員制度というものがあって、何百社もの企業さんが会員になっていただいています。ケンダイラボは、その会員企業さんのうち、4つの企業と学生が実施する産学協働プログラムです。企業が抱える課題に対して、3年生を中心とした学生が企業担当者と一緒にアイデアを出すところから始め、ディスカッションやフィールドワークなどさまざまな活動を通して、課題解決や新たな事業へつなげることを目指すというものです。最後に発表会を行い、コンテスト形式で優劣をつけます。大学はあくまでも研究機関ですので、社会との接点を持つことで、学生にとっていい教育・研究の場になることがすごく大事ですよね。

寺島 学問の研究だけをしていると、視野が狭くなりますもんね。今は、学問だけの時代ではなく、学問をどう生かすか考える力も必要な時代です。企業側も、岩本先生がおっしゃったような誰かが喜ぶことを考えられる人材を求めていると思います。ですので、DXセンターで視野の広い活動を学生のうちに経験しておくと、社会に出て新たな課題に直面しても解決できる人材になるのでは。そういう意味でいうと、DXセンターならではの活動はものすごく特色がありますよね。ましてや、県庁の内部に入れるというのはなかなかないと思いますので。

岩本 大学と社会との間には、高い壁やお堀があるように感じています。その垣根を越えるのがDXセンター。オープンな場所なので、社会の人が入りやすく、学生や教員もリラックスして民間の方と話ができますし、学生同士も楽しく会話ができます。

寺島 よその研究室が何をしているかが分かりますし、オープンですよね。学生にとってはVRなどを見るだけでも世界観が変わってくるので、視野が間違いなく広がると思います。

岩本 情報システム工学科の学生からすると、寺島研究室の学生が車をいじっているところを見るだけでも違うんですよ。寺島研究室の学生もうちの研究室の学生を見て、パソコンでゲームみたいなことをやっているなとか、YouTubeばっかり見ているなと思っているかもしれませんが、違いを知ることもできます。DXセンター開設から1年も経っていないので、もう少し時間がかかりますが、学生同士が気軽にコミュニケーションを取るような関係になっていけばいいと思っています。

寺島 企業さんから「DXセンターができてから相談しに来やすくなった」と言われるように、少なくともDXの分野に関しては企業と大学の橋渡しがうまくできているなと感じています。最初は知能と情報と機械の研究室から始まりましたが、今は生物、医薬品、看護の先生も参加してきているので、徐々に広がりつつあるのかなと思っています。学生同士に関しても、学科や研究室の垣根をある程度越えられるメリットがありますね。

岩本 富山県立大学には、DXセンターのような学際的な場があり、一つの学問にひたすら打ち込める場もあります。多様性を備えているところが本学の良さなので、これからもバランス良くDX人材を育成していけたらいいですね。


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