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マルチスペクトルイメージング用デバイスの研究


フォトニック結晶型光素子の設計と試作実験

光の波長以下の周期を持つ屈折率周期構造体はフォトニック結晶(Photonic Crystal)と呼ばれます。最も基本的なフォトニック結晶は誘電体交互多層膜で、これは古くから多層膜干渉フィルターとして使われてきました。この多層膜に水平方向の周期構造を付与すると2次元・3次元のフォトニック結晶ができますが、これは深いストップバンド、高い波長感受性、水平方向周期に依存したパスバンドなど、交互多層膜にはない全く新しい特性を持っています。
本研究室では、①このような多層膜型フォトニック結晶中の新奇光学現象の解明、②FDTD法の電磁界シミュレーションを用いた光機能素子の設計、そして③微細薄膜加工プロセスを用いた素子の試作実験を行っています。特に、分光イメージングに必要なマルチスペクトル・フィルター・アレイ(MFA)の創出に近年は力を注いでいます。


図1. フォトニック結晶(PhC)型近赤外MFAの構造

フォトニック結晶型MFAのプロセスの一部はナノテクノロジープラットフォーム/東北大学マイクロシステム融合研究開発センター所有の電子ビーム描画装置で作製しています(以下は装置の写真と、リソグラフィ後の結晶基板)

近赤外分光イメージングの研究

試作したMFAをCCDやCMOSのイメージセンサーに集積化すると分光イメージセンサーとして機能させることができます(下図上)。このセンサーを使い、主に農産物のイメージングを試みています。スーパーで売られている果物の中には、光センサーで糖度を計測したと謳っているものがたくさんあります。これらは近赤外域(おおむね波長700nmから1000nm)のいくつかの波長における果肉の吸光度から計算しています。現在の光センサーの多くはピンポイントもしくは対象物全体の平均的な糖度を測っているにすぎません。我々は分光イメージセンサーを使い、糖度の分布をイメージとして可視化することに挑戦しています。
この研究は近赤外LEDを用いた高輝度照明の開発や、画素ごとに得られる膨大な光強度データの統計処理、MFAの透過スペクトルの最適設計を始めとした、いくつかの周辺技術の開発も含んでいます。下図下は、分光イメージセンサーを搭載したカメラによる撮影実験の様子です。


フォトニック結晶MFAと、同じくフォトニック結晶型近赤外偏光子を搭載したCCDカメラ


MFAの分光感度の測定の様子


分光イメージカメラで撮影した果物(りんご)の近赤外画像

多層膜型PhCを使うことのメリットの一つに広帯域性があります。PhCの膜材料は主にSiO2やNb2O5といった酸化物なので、波長400nmの紫外・青色領域から波長2000nmを超える近赤外領域まで透明です。従って適切なセンサーさえ組み合わせれば、多様な波長域での分光イメージングが可能になります。 下図は化合物半導体(InGaAs)のイメージセンサーと組み合わせて波長1400nm帯、4バンドのスペクトル画像計測の結果から画像処理をして得た、異種透明溶液の混合過程の可視化例です。左は純水の入ったガラスセルに上からエチルアルコールを注いだ様子、右は逆に純水を注いだときの様子です。MFAを使う方式の分光イメージングでは1度の撮影で複数波長の像が得られるため、連続で撮影することでこのようなリアルタイムの可視化もできるのです。

      
ガラスセル中での異種液体の混合プロセス。(中)純水に上からエチルアルコールを注入したとき、(右)エチルアルコールに上から純水を注入した時の様子。色の違いは混合比率に対応している。

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