2.水銀

水銀は火山ガスに含まれるほか、石炭の燃焼などによって大気中に放出されます。ガス状の水銀は大気中に長時間とどまり遠方に輸送されます。また、インドネシアなどでは金を採取するのに大量の水銀を使用しており、この水銀が大気や水系に放出されています。当研究室では、以下の調査を行っています。

(1) 石炭の燃焼に伴う水銀の長距離輸送
(2) 立山の火山ガスに含まれる水銀の濃度
(3) インドネシアにおける水銀の環境中への放出

2-1水銀の長距離輸送
鹿児島県の屋久島にモニタリングステーションを設置し、大気中水銀を連続的にモニタリングしています。水銀以外にも大気中の粒子、二酸化硫黄、オゾンなどを測定しています。屋久島で観測を行う理由は、中国からの大気汚染を直接受けるからです。

一湊中学校に設置した大気観測装置
(水銀モニター、SO2計、オゾン計、サルフェートモニター)

 

屋久島の飛び魚 縄文杉にて

2-2立山の火山ガス
立山室堂の地獄谷から水銀ガスが発生していることが分かってきました。連続測定装置を設置し、発生量の推定と拡散計算を行っています。

地獄谷からのガスで周辺のハイマツが茶色く枯れています。 立山室堂において水銀、二酸化硫黄、オゾンの観測を行っています。
夏の立山。手前はみくりが池。

2-3 インドネシアにおける水銀
インドネシアなど多くの開発途上国では、住民が金鉱石から金を製錬するために水銀を使用する、Artisanal and Small Scale Gold Mining (ASGM) が行われています。これまで、西スマトラアチェ州、中央カリマンタン、中央スラウェシ、北スラウェシなどで大気中の水銀濃度を測定し、非常に高濃度の水銀を検出しています。中央スラウェシのPalu市ではWHOのガイドラインである1000ng/m3を大幅に上回る47000ng/m3の水銀が一般大気中から検出されました。日本では2ng/m3程度です。水銀の拡散計算を行い、水銀の放出量を推定したところ、年間80トンもの量が大気に放出されていることが判明しました。水銀の使用量としては年間200トンと推定されます。日本全国の水銀の使用量は年間約9トンですので、いかにすごいことが行われているかがわかります。

インドネシアにおけるASGM
金鉱石と水銀と水とをゴロンドンと呼ばれる回転ドラムに入れて、3時間ほどすると細かく砕かれた金鉱石から金が水銀との合金(アマルガム)となって抽出されます。


ゴロンドン。20から30個のドラムがエンジンによって回転します。


金鉱石をピットに洗い流す作業。水銀を含む水の中で作業が行われます。(中央カリマンタンにて)


金と水銀のアマルガム。


このアマルガムをバーナーで加熱すると水銀が蒸発して金が残る。


精錬された金と銀


ゴロンドンから排出された泥を袋に詰める作業。
シアンを用いて金を抽出する業者に一袋300円ほどで販売します。
この泥は高濃度の水銀を含みます。(中央スラウェシにて)。


中央スラウェシや、北スラウェシでは、金をシアンで抽出するプロセスも採用されています。シアンは水銀より抽出効率が高いとされていて、ゴロンドンを用いたプロセスで水銀では抽出できなかった金を別の業者がシアンを用いて抽出しています。ゴロンドンから排出された泥を上の写真のドラムに流し込み、水とシアンと炭を加えて撹拌すると金が炭に吸着されます。炭を燃焼すると金が残るという製錬法です。シアンの致死量が1g程度であるのに対し、彼らは一度に20kgのシアンを投入しています。抽出後の排水も近くに掘った池に流し込むだけです。

  
湖での魚や底泥の調査。(中央カリマンタンにて)


中央スラウェシパル市の水銀濃度分布。
金製錬所の近くでは47,000ng/m3という高濃度の水銀が検出されました。
多くの住民が住むパル市街地でも1,000ng/m3を超えています。


これはインドネシア中央カリマンタン州での写真です。
調査をしていると子供たちがたくさん集まってきます。
近くに小学校があるのですが、この場所で1,400ng/m3の水銀が検出されました。

  
インドネシアフォーラム。研究成果を地元に還元します。(パランカラヤ大学にて)


インドネシアフォーラム。(TADULAKO大学にて)


研究発表で緊張した後はおいしい食事で一息。

パランカラヤ大学の学部長の家に招かれた時の写真です。
学生同士は言葉があまり通じなくてもすぐに仲良くなります。






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