Research

村上グループは、外部刺激応答性ナノ材料を用いて、新しい細胞工学手法と難病治療法のためのドラッグデリバリーシステム開発を目指して研究を行っています。いずれの場合も、そのナノ材料を望みの場所にいかに選択的に集積させるかが最も重要な課題の1つです。なぜなら外部刺激応答(例えば、熱など)は、通常、有害であるため、無秩序な発現は細胞傷害、副作用につながってしまいます。さらに、ナノ材料自身にも高い生体適合性が要求されます。私たちは、ヒトの体の中にあるナノ材料と外部刺激応答性ナノ材料を組み合わせることによって、この課題をクリアしようと考えています。具体的には、この生体由来ナノ材料を蛋白質工学的手法により改変し、外部刺激応答性ナノ材料を内包・被覆するだけでなく、特定部位に集積させることを目指しています。

現在、国内と国外(スイス連邦工科大学)のグループと、以下に示す学際的な研究プロジェクトを進めています。

  • 1.外部刺激応答性ナノ材料の生体適合化・機能化技術の開発
  • 2.光応答性ナノ材料の細胞内精密配置と細胞機能制御
  • 3.光応答性ナノ材料の生体内精密配置と難病治療
  • 4.生体由来ナノ材料を用いたin vivo遺伝子キャリアシステムの開発

1.私たちのグループが注目する光応答性ナノ材料の電子顕微鏡写真

(a)金ナノロッドと(左)とカーボンナノチューブ(右)
(b)半導体性(左)と金属性(右)を示すカーボンナノチューブの分散液

金ナノロッドは近赤外光を吸収して高効率に熱を放出します。カーボンナノチューブも近赤外光を吸収して熱を放出しますが、半導体性カーボンナノチューブは活性酸素種も生成します。私たちは半導体性カーボンナノチューブの生成する活性酸素種が癌細胞を死滅させることを見いだしました。

2.生体由来ナノ材料の模式図とその機能化

高比重リポ蛋白質(HDL)はディスク状リン脂質二重膜に脂質結合蛋白質(apoA-I)が巻き付いた構造が予想されています。HDLは様々に機能化されます。例えば、apoA-Iの化学修飾、荷電性リン脂質の利用、疎水性部位を有する機能性分子の膜挿入、apoA-I変異体の利用、疎水性薬物内包によるサイズ制御、が挙げられます。私たちは、apoA-Iに細胞膜透過ペプチドを融合すると、得られるHDL変異体が細胞内に効率良く取り込まれること、疎水性薬物の内包量に応じてHDLのサイズが変化すること、を見いだしました。

3.細胞表面に接着するHDL変異体の電子顕微鏡写真(a)とその模式図(b)

図中灰色で示された細胞膜透過性HDL変異体は、細胞培養液添加2分以内という極めて短い時間で細胞表面に吸着し、クラスター(矢印)を形成することが分かりました。この後、このHDL変異体は細胞内に取り込まれます。私たちの研究目標の1つは、このHDL変異体が細胞とどのように相互作用し、取り込まれるかを解明することです。この研究から、遺伝子デリバリーシステムの開発に有用な知見が得られると考えています。

↑その模式図(b)
←電子顕微鏡写真(a)